「チッ、うるせぇな。行くぞブス!」
「っ、い」
煩さに嫌気が差したのか突然あたしの腕を掴んだ灰色。
激痛が身体に走って涙が滲み出る。
そんなあたしに気付く筈もなく歩き出す灰色を、蹴り飛ばしたくなる。
「っ、いた」
あまりの痛さに小さく声が溢れるけど灰色は気付かない。
気付くわけない。
だって、あたしは彼らの"嫌いな奴"なのだから。
「っあ、」
引っ張られて、痛みで力の入らなくなった身体がふらりと傾く。
転ぶ、と目を強く瞑って衝撃に備える。……だけど、いつまで経っても襲ってこない衝撃。
代わりにお腹に回された細いくせに逞しい腕に気が付く。
「……軽」
再び耳元で聞こえた声に、抱きとめられていることに気付いて。慌てて離れようとするけど、暴力の受けた際の痛みで動けない。
「あ?なにジタバタしてんだ?」
抵抗が小さ過ぎて、首を傾げられる。あたしを抱き止めた事に悲鳴が上がる教室に、灰色は舌打ちをする。