「君せめて1本は食べようよ」



灰色の背中を見つめるあたしに、金色が話し掛ける。



「や、だ」



顔を覗き込むようにそう言われて逃げる様に後退り首を振る。


「なんで食べないの」


それでも根気良く聞いてくる金色になんだか泣きそうになる。


なんで放っておいてくれないの。急になに。いつもみたいに存在を無視しててよ。


オレンジ色と銀色も、あたしを見てないで自分の事をしててよ。


震えそうな身体をバレないように抑えこんで、平静を装う。



「おら。食わねぇならせめて飲めや」



戻ってきた灰色があたしにマグカップを渡してくる。


「え……」


渡されたマグカップの中身に声が漏れる。



「ここあ…」



幸人くんがココアをくれた時と同様その甘い香りに強張っていた身体がほんの少しだけ解れる。



「俺がわざわざ淹れてやったんだ。ちゃんと飲めよ」



手が掛かると呟く灰色。むず痒いけれど、ありがとうと小さくお礼を伝えて。