ゆっくりと咀嚼して飲み込んでやはり感じない空腹感にカロリースティクを袋に戻す。
「え、」
不意に左隣りから聞こえた声に思わず顔を向けてしまう。
「君、まさかとは思うけどもう食べないつもり?」
あり得ないとでも言いたげな表情の金色に頷く。
「はぁ?!もう食わねぇの?!お前、生きてる?!」
「あり得ねぇ」
「なに、この女。なんで一口で満足してるの」
灰色、銀色、オレンジ色までもあたしをあり得ないと見てくる。
「……お腹、空かないもん」
だって、と。小さく。小さく呟いた。
それを聞いた龍神の人達は、眉間にシワを寄せてあたしを見る。その視線から逃げる様に俯いて、スカートを握り締めた。
「食べなきゃ倒れるよ」
宥めるような金色の声に首を振る。
なんで心配なんかするの。なんであたしを気にかけるの。
いつもみたいに放っておいてくれて、いいのに。
俯いたまま目を閉じる。グチャグチャな感情があたしの中で渦巻く。
「仕方ねぇな」
ふと聞こえてきた右隣りの灰色の声に顔を上げる。
あたしを見下ろして笑う灰色に、首を傾げる。
「待ってろ」
立ち上がった灰色は、何かをしに冷蔵庫が置いてある場所まで歩いて行ってしまった。