音を立てないように家に入る頃には明かりは消えていて。
兄と会うことがなくて安心する日々。
兄を見たら思い出してしまうから。
あたしを見た兄は後悔に染まった表情をするから。
だからあたしは極力家には居ないようにしている。
自分の部屋に入ってベットに倒れ込む。
「疲れ、た」
独白が部屋に響く。
久し振りに、というか初めて返事とか以外にあの場所で話したかもしれない。
幸人くんとの会話を思い出して、疲れを感じる。
やっぱり、苦手…だ。
苦手というより怖いのだけど。
「寝よう」
お風呂は朝でいいかとそのまま瞼を強く閉じた。
舌先にココアの甘い味が残ってた。