「おいし」
幸人くんから貰ったココアを飲んで過ごす。
楽しそうな声を聞いて、ただぼうっとしてゆっくりと時間が過ぎていく。
「おい」
ぼうっとしているあたしに声が掛けられて、声のした方を見上げれば不機嫌な銀色の姿。
「送る」
そう言って歩き出す銀色にあたしも立ち上がる。
龍神の人達があたしを家に送るのは決まって夜の9時。
高級車に乗せられて家に送り届けられる。
明かりの付いた家の前に車が止まれば、運転手をしてくれる龍神の人がドアを開けてくれる。
「ありがとうございました」
その人にお礼を言うのもいつも通り。
「いえ。おやすみなさい」
貼り付けたようにニコリと笑った運転手は、そそくさと車の中へと戻っていく。
銀色と会話をする事もなく車は闇夜の中へと走り出す。
「はぁ…」
あたしは玄関の扉を背にその場に座り込む。
体育座りをして膝を抱えて顔を埋める。
それから夜中まで時間を潰すのもこの3ヶ月間で始まった"いつもの事"で。