「姫、ココア冷めるっす」
ココアを握り締めるあたしを見て幸人くんが飲むように促す。
促されて一口、ココアを口に含めば甘い味が口の中に広がる。
美味しいと少しだけ頬が緩む。
「本当に好きなんすね」
あたしを見てそう言う幸人くんに頷く。
「姫の頬が緩むの初めて見たっす」
「え?」
幸人くんのその言葉に間抜けな声が出る。
「だって姫。いつも泣きそうな顔してるんすもん」
だから安心しました、と笑う幸人くんに喉の奥が熱くなる。
見ててくれたんだ、と。
あたしの居場所は此処にないけれど、見てくれてた人も居たと知ると嬉しい。
嫌いなくせに、縋ってるような自分が醜い。
「あ、りがとうございます」
お礼を言えば、首を傾げられる。
意味は分からなくていいし教えるつもりもない。
ただあたしが言いたかっただけ。
「幸人くん、他の人が見てますよ。戻った方がいいんじゃないですか?」
さっきから感じてる視線にそわそわしてまう。
興味2割に嫌悪が8割……かな。
それに気付いた幸人くんは、ごめんなさいと謝って輪の中へ戻っていった。