「ココア飲みませんか?」



…ココア。

控え目に問い掛けられた問いを頭の中で反芻して。


「の、み…たいです」


そっと彼を見上げれば、


「じゃあ今淹れてきますね」


嬉しそうに笑う彼がいた。
なにが嬉しいのだろうか。


「ちょっと待ってて下さい」


そう言うが早いか走り出すが早いか、彼は何処かに駆けて行く。


すると数分して笑顔の彼が戻ってくる。



「お待たせしました」



手渡されたマグカップの中には湯気がゆらゆら揺れるココア。

受け取ったそれの甘い香りに思わず頬が緩む。



「ココア好きっすか?」



そんなあたしを見て、首を傾げて問い掛けてくる彼。


「……好き」


答えるか迷ったものの答えた。