「ははっ……」

人ってこんなに体、震えるもんなんだ。
膝だけじゃなくてわたしの全身に震えが伝わってきた。


だめだ。学校に間に合わなくなっちゃう。
立たないと。
再び電信柱に掴まり立ち上がろうとした時、わたしに近寄る影が――



「大丈夫ですかな?お嬢さん」

「えっ」


咄嗟に振り向けば、ハットを被り、綺麗なスーツを身に纏うご老人がいた。


「あぁ……大丈夫、です。ご親切にありがとうございます」


お礼を言うのと同時になんとか立ち上がれた。
だが、立つことを意識しすぎたのか握っていた紙がするりと地面に落ちた。


「あっ」


すぐさま拾おうとしたが、ご老人の方が先に拾い上げた。

「……おや」

見えてしまった文面に、ご老人はわたしを見る。


「お住まいをお探しで?」