「おはようございます。本日で仕事納めとなります。この一年も、みんなで協力しながら数々の仕事をこなしてきました。みんなのがんばりに心から感謝します。ありがとう。来年もよろしくお願いします」

朝礼で潤が挨拶すると、皆も「ありがとうございました。来年もよろしく」と声を掛け合う。

「はーい!じゃあみんな、午前中で仕事を終えてね。午後は大掃除、夜は飲み会でーす」

紗絵の言葉に、イエーイ!と早くも皆は盛り上がる。

年内の全ての仕事を終えられたか、互いにチェックしながら仕事を進め、昼休みを挟んで大掃除を始めた。

男性社員がデスクやキャビネットを動かし、女性社員が掃除機をかけて拭き掃除をする。

段取り良く掃除を終えると、予定よりも早い17時に居酒屋へ向かうことになった。

隣のオフィスに顔を出し、皆で「今年もお世話になりました。来年もよろしくお願いします。良いお年を」と挨拶する。

そのままエレベーターホールへ向かおうとすると、「望月ちゃーん!」と平木に呼び止められた。

「はい、なんでしょうか?」
「君に言い忘れたことがあるんだ。少し早いけど……。メリークリスマス!」

は?と固まっていると、潤が背中に手を添えて促した。

「空耳だ。さっさと行こう」
「あー!おい、潤!今年こそは望月ちゃんを射止めてみせるからな!」
「それを言うなら来年こそだろ。ま、いずれにしても遅い」
「あ、そっか!望月ちゃーん、来年こそはデートしてねー」

あ、はいと思わず真美が頷くと、潤がムッとしてさり気なく手を握ってきた。

「ちょ、あの、課長!」

真美は小声で訴える。

「なに?」
「あの、みんなに見られちゃいますから。離してください」
「大丈夫。見られないよ」

そう言うと潤は、真美の手を握ったまま自分のコートのポケットに手を入れた。

ヒー!と慌てて手を引っ込めようとすると、潤はしっかり指と指を絡めて、更に強く真美の手を握る。

わいわいと皆で居酒屋に向かう最後尾で、潤と肩を並べた真美は、ヒヤヒヤドキドキしながらうつむいて歩いて行った。