次の日の早朝。
潤は真美をマンションに送り届けてから帰宅した。

あのあと、安心したようにウトウトし始めた真美をベッドに運び、一晩中髪をなでながら、潤は真美の寝顔を見つめていた。

日が昇る前に真美が目覚め、交代でシャワーを浴びてから部屋を出る。

真美は終始はにかんだ笑みを浮かべていて、その可愛らしさに、仕事なんてさぼってどこかに連れて行こうかとも思ったが、会社で会えるのだからと踏みとどまった。

2時間ほど仮眠してから出社すると、続々と課のメンバーがオフィスに入って来る。

「おはようございます」

飛び交う挨拶に応えていると、やがて真美も出社して来た。

ブラウスにノーカラージャケット、膝下のフレアスカートにパンプスというオフィススタイルで、髪もラフにまとめている。

「おはようございます」

控えめな真美の声に「おはよう」と返事をする。

真美は目を合わせることなく、そそくさと席に着き、隣の席の若菜や向かい側の紗絵と言葉を交わし始めた。

(ふーん……。会社では内緒にするつもりか)

真美の性格を考えたら、まあそうだろう。

課長とつき合うことになった、と自分から言い出すつもりはなさそうだ。

(ても、ま、結婚したらさすがにバレるけどな)

ニヤリとほくそ笑んでいると、視線を感じたのか、ふと真美がこちらに目を向けた。

にっこり笑いかけると、目を丸くしてから慌てて視線を落とす。

(ふっ、可愛いな。しばらくこうやって楽しむのも悪くない)

真美が聞いたら怒りそう、と思いながら、潤はニヤニヤと事あるごとに真美に視線を送っては、顔を赤くして目を逸らす初々しい反応に頬を緩めていた。