「あれ?真美、どこ行ってたの?」

デスクに戻ると、向かいの席から先輩の紗絵(さえ)が声をかけてきた。
潤や平木と同期の29歳で、課長補佐を務めている紗絵はスラリとスタイルが良く、ロングヘアが似合う美人だ。

「あ、えっと、ちょっと課長に呼ばれまして」
「え?五十嵐くんに?珍しいわね」
「あ、はい。ところで何かありましたか?紗絵さん」
「私は何も。真美は?」
「え?私も何も……。あっ、いえ。課長とは、午後のクライアントとの打ち合わせの件で確認をですね」

手元の資料をバサバサとめくりながら取り繕うと、紗絵は、ふーん、と意味ありげに真美を見つめる。

「あ!言い忘れたことがあったのを思い出しました。ちょっと課長と話してきます」

大事な確認事項を思い出し、真美は今度こそ仕事の話をしに潤のデスクに向かった。