「真美ちゃん、寝かしつけありがとう。コーヒー淹れるわ」
「はい、ありがとうございます」

ダイニングテーブルに戻ってきた真美にコーヒーを淹れてから、都はスケッチブックを開いた。

「真美ちゃんは、どういうイメージかなー?どんなジュエリーが好き?」

サラサラと鉛筆を走らせながら聞く。

「えっ、私のイメージで描いてくださってるんですか?」
「うん。無性に描きたくなっちゃってね。なかなかいないんだもん、真美ちゃんみたいなピュアな人。やっぱり可愛い感じが好き?」
「私、普段はまったくアクセサリー着けないんです。だから本当に、どんなのがいいのか分からなくて……」
「男性からプレゼントされたことは?」
「ないです。おつき合いしても、すぐにフラれましたし」

ええ?!と都は手を止めて驚く。

「フラれた?真美ちゃんが?」
「はい。つき合ってって言われておつき合い始めたら、数か月後に、やっぱり別れてって言われました」
「な、なんて身勝手な……」
「それ以来自信が持てなくなって……。告白されたのはその1回だけですし。やっぱり私なんて、他の女の子に比べたら全然ですものね」

ガン!とテーブルの下で都が潤の足を蹴り、潤は思わず顔をしかめた。

「真美ちゃん、そんな『目が節穴オトコ』の言うことなんて気にしちゃだめ。そんなヤツ、こっちから願い下げよ。いい?真美ちゃんは他の子にはない魅力に溢れた女の子なの。自信を持って」
「お姉さん……」

目を潤ませる真美に、都は力強く頷く。

「よーし!真美ちゃんに自信が湧いてくるような、とびきり素敵なジュエリーをデザインしちゃう!岳がお世話になったお礼にプレゼントさせてね」
「ええー?!そんな!ジュエリーなんて高価なものいただけません」
「あら。真美ちゃんが受け取ってくれないならドブに捨てることになるわ。だって、真美ちゃんの為のジュエリーですもの」
「ええー?!捨てるだなんて、そんなこと」
「じゃあ、受け取ってね」

にっこり笑うと、都はまたスケッチブックにサラサラとデザインを描いていった。

「ネックレスとブレスレット、同じモチーフにしようかな。真美ちゃん、ちょっとサイズ見させて」

そう言って都はバッグの中からたくさんの細いシンプルなチェーンを取り出した。

1つを真美の首に着けて少し離れた所から眺める。

「んー、丈はプリンセスかマチネにしようかな」

色んなチェーンを試し、手首でも試すと、最後にリングのサンプルを取り出して、真美のあちこちの指にはめた。

「オッケー!あとは完成を楽しみにしてて。あ、真美ちゃんって誕生日いつ?」
「4月です」
「わーお、誕生石はダイヤモンドとモルガナイトね。いいわねー、腕が鳴るわ」

そう言ってまた熱心にスケッチブックにデザインを描き始めた。