「どれも美味しいね、がっくん」
「うん!」
「私ね、ケーキとクッキー焼いてきたんだ。がっくんがお昼寝したあとに食べようか」
「まみのケーキ?たべたい!」
「ふふっ。じゃあしっかり食べてお昼寝してからね。プレゼントもあるよ」

やったー!と岳は両手を上げて喜ぶ。

「おれ、たのしみすぎておひるねできない」
「じゃあ、私と一緒に寝る?」
「うん!まみとねる」

ゴホッとチキンを喉に詰まらせる潤に、都は呆れてため息をついた。

食事のあと、真美は岳をソファに寝かせて、優しくお腹をトントンしながら頭をなでる。

「がっくん、いい夢見てね」
「うん。まみとゆめであう」
「ふふっ、そうしよう。夢で会おうね」

岳は嬉しそうに笑って目を閉じ、スーッと寝息を立て始めた。

「あー、もう、さすがの私もラブラブ過ぎて直視出来ない」

ダイニングテーブルでコーヒーを飲みながら、都が潤に小声で囁く。

「真美ちゃんって、ほんとに純粋な子なんだね。擦れてないし、子どもみたいに心が綺麗。なんかこう、降り積もった真っさらな新雪みたいよね。私、自分が汚れた女に思えてくるわ」

ブッと思わず潤は吹き出した。

「姉貴がそんなこと言うなんて珍しいな。いつも、ものすごい自信家なのに」
「そりゃあさ、そこらの女に対してなら、負けないわよ!って気になるけど。真美ちゃんには絶対勝てない。もう、すぐに降参」

そう言って両手を上げる。

「ねえ、真美ちゃんって会社でもモテる?言い寄ってくる男、いるでしょ?」
「どうだろ?見かけたことないけど」
「何を呑気なこと言ってんの!真美ちゃんを狙う男はね、本気で奪いに来るわよ。軽く声かけたりしない。それくらい周りの女性とは一線を画してるわ、真美ちゃんって」
「そうかな?」
「そうよ!だって見たことある?あんなに子どもに優しく、真っ直ぐに接してくれる女の子」

確かに、と潤は頷く。

「望月は、大人として子どもに接しないんだよ。子どもを尊重して対等に接する。しかも、それを意識することなく、ものすごく自然に。だから岳があっという間に望月に心を開いたんだ」

へえ、と都は真顔に戻って感心する。

そしてニヤリと笑った。

「なーんだ、よく見てんじゃない。逃すんじゃないわよ?あんなにも特別な女の子なんだからね」

潤は少し口を尖らせつつ、頷いた。