「おはよう。五十嵐くん、早いわね」
「ああ、おはよう」

翌日。
ひとり暮らしに戻った潤は、何をする気も起こらず、朝起きてコーヒーを飲むとすぐにマンションを出た。

オフィスには誰もおらず、しばらくして出社してきた紗絵に、何かいつもと違うと勘づかれたようだった。

「今日から真美も出社するんだったわよね?これで課のメンバーが久しぶりに揃うわね。と言っても、もうすぐ年末のお休みに入るけど。その前にこなしておく仕事の確認と……って、ちょっと、聞いてる?」
「え?ああ、ごめん。なに?」
「なにって、どこまで聞いてた?」
「えっと、何も」

はあ、と紗絵は大きなため息をつく。

「しっかりしなさいよ、課長!尻拭いさせられるのは私なんだからね!」
「ああ、ごめん。分かった。ちゃんと集中するよ」
「頼んだわよ?まったくもう……」

紗絵がブツブツ言いながらデスクに戻ろうと振り返った時だった。

「うわっ!」

いつの間に来たのか、ボーっと突っ立っている真美が目の前にいて、紗絵は飛びすさる。

「ま、真美?ちょっと、ほんとに真美なの?」
「……紗絵さん、お久しぶりです」
「どこに行って何をやったら、そんなに魂抜けるのよ?」
「ちょっと……、そこまで」
「は?!」

ヨロヨロと席に着く真美と、ボーッとしたままの潤を見比べ、なんだこりゃ?と紗絵は両手を広げた。