「すっごーい!これ全部まみちゃんが作ったの?」
「はい、がっくんにも手伝ってもらって。ね?がっくん」
「まみのりょうりは、なんだってうまいからな」

ダイニングテーブルには、ちらし寿司やいなり寿司、お吸い物の他に、岳の好きな唐揚げやハンバーグ、ポテトサラダも並んでいる。
大人用には、サーモンマリネやカプレーゼ、アクアパッツアも用意してあった。
デザートには手作りのプリンやブランマンジェ、チーズケーキもある。

「ではがっくん。早速始めようか」

真美の言葉に頷くと、岳はパーティーハットを被り、ポケットに入れてあったクラッカーを取り出す。

「ママ、おかえりなさーい!」

そう言って力いっぱいクラッカーの紐を引っ張った。

パン!と音がして、カラフルな紙テープが飛び出す。

「わー、ありがとう!岳」

都は岳を抱き上げて頬ずりする。

「岳もよくがんばったね。ありがとう!しばらくはママ、ずっと岳と一緒にいるから、何でも聞いてあげるよ。行きたいところとか、欲しいもの、何でも言ってね」
「やったー!」

屈託のない岳の笑顔に、本当に良かったと真美も胸をなでおろした。

4人で席に着くと、早速料理に手を伸ばす。

「んー、このお吸い物、なんて美味しいの。沁みるー」

都は真美の手料理にうっとりと目を細めた。

「和食、お久しぶりなんですよね。たくさん召し上がってくださいね」
「ううん、向こうでも和食レストランはあったの。でもまみちゃんの手料理の方が何倍も美味しい!いいお嫁さんねえ、ほんとに」

すると唐揚げを頬張った岳が得意気に胸を反らした。

「おれ、まみとけっこんするんだ。まみはおれのおよめさん」
「うっそ!そうなの?」

岳!姉貴!と咎める潤の声は、あっさりとかき消される。

「うん!だっておれ、まみにプロポーズしたもん。まみ、うんっていってくれた。まみもおれがだいすきなんだって!」
「そうなんだー!男だねえ、岳。誰かさんとは大違い。でかしたぞ!岳」
「えへへー」

ちょっと!と焦っているのは潤だけだ。
真美もニコニコしながら岳の言葉を聞いている。

(え、もしや!望月、岳が大人になってプロポーズしたら、ほんとに結婚する気かも?)

あり得ないと思いつつ、大きくなった岳を想像すると、充分あり得ると思えてくる。

(しかも今と同じラブラブな雰囲気だったら?望月よりも背が高くなった岳が、望月のことを抱き寄せて……)

ぽわーんとその姿が浮かび、必死で潤は頭を振った。

「課長?どうかされましたか?」

真美に顔を覗き込まれて、潤は真っ赤になる。

「いや、何でもない」

急いでいなり寿司を口にする潤を、都はニヤニヤしながら横目で見ていた。