昼食の後、岳がお昼寝を始めると、真美は潤と並んでパソコンを広げた。

「あ、課長。メール送ってくださったんですね」
「ああ。課のメンバー全員にね」

そう言えば……と、真美は苦い表情で切り出した。

「さっき公園にいた時、紗絵さんから電話がかかってきたんです。それで、色々怪しまれてしまって……」

なにを?と首をひねった潤は、もしかして!と閃いた。

「俺が望月と駅で待ち合わせしてパソコンを渡したってことにしたんだけど、それを突っ込まれた?」

コクリと小さく真美が頷く。

「ごめん!帰って来たら伝えようと思ってたんだ。まさかすぐに電話をかけるとは……」
「いえ、大丈夫です。それでなくても紗絵さん、以前から私と課長の間に何かあるって思っていたようでしたから」
「そうなの?」
「はい。会議室に二人でいたこともご存知でした」
「あー、そうかも。平木と二人でドアの前で様子をうかがってたな。そうか、平木もか。きっと妄想膨らませてるんだろうな」
「私と課長の間には何もない、というのは信じてもらえましたけど、それにしても何かのやり取りはあるでしょ?って」

うーん……と潤は腕を組んで思案する。

「あと2週間ほどで岳の母親が帰国する。そうすれば岳はここから出て行くし、望月にお願いすることもなくなるよ。俺も定時で上がらずこれまでみたいに残業するし、そのうちに自然とあいつらが忘れてくれるといいんだけど」
「そうですね。ひとまずがっくんのママが帰国されるまでは、私もテレワークで出社は控えます。次に会社に行く時には、もう課長との接点は何もないので、それ以上は怪しまれることはないと思います」
「そうだな。色々迷惑かけてごめんな、望月」
「とんでもない。がっくんと一緒にいられて、私こそ毎日楽しいですから」
「そうか、本当にありがとう」

そして二人は肩を寄せ合ったままパソコン作業を始めた。

いつの間にか二人の間に流れる空気も穏やかで、近くにいるだけで安心して心が落ち着く。

互いに居心地の良さを感じながら、仲良くカタカタと仕事を進めていた。