11月の終わり。
いつもの定例会議に向かいながら、紗絵は潤にそれとなく切り出した。

「五十嵐くん。今月は何か問題点ある?」
「いや、特にないよ」
「先月は真美のこと心配してたみたいだったけど?」
「ああ。あれから望月と話が出来たんだ」

え?!と紗絵は驚く。

「二人で話せたってこと?いつの間に?」
「ん?まあ、ふとした時に」
「何よそれ?何を話したの?」
「それは守秘義務で言えない。けど、課長として状況は把握出来た。これからも様子は気にかけておくよ」

はいー?と紗絵は眉間にしわを寄せる。

「五十嵐くん、私の知らない真美の悩みを知ってるってこと?」
「肯定も否定もしない。必要だと判断すれば、課長補佐のお前に相談するかもしれない。だけど今は俺一人で対処する。この話はこれで終わりだ」

前を向いて歩きながらきっぱり言い切る潤に、紗絵はそれ以上何も言えなかった。