「がっくん、ご飯にトッピングしていくよ。まずどれから載せる?」
「えっと、たまご!」
「よーし。じゃあスプーンですくって、好きなだけ載せてね」
「うん!」

岳は小さな手でゆっくり慎重に卵を載せていく。

その様子にふふっと目を細めてから、真美も自分のご飯に具を載せていった。

「まみ、このピンクの、なに?」
「これはね、桜でんぶ。ちょっと味見してみる?」
「うん」
「はい、あーん」

真美が岳の口に少し運んで食べさせると、岳は目をまん丸にした。

「あまーい!」
「甘いでしょ?これね、お魚で出来てるんだよ」

すると潤が「ええー?!」と大きな声で驚いた。

「なんだよ、じゅん。おとななのに、しらなかったのかよ?」
「うん、知らなかった」
「ちゃんとまみのいうこと、おぼえておきなよ?」

真顔で諭す岳に、真美は思わず笑ってしまう。

3人で思い思いにどんぶりを盛りつけると、互いに見せ合った。

「がっくん、上手に出来たね!カラフルで美味しそう」
「まみの、すごい!おはながさいてる!」

どれ?と潤も覗き込む。

「ほんとだ。綺麗だな」

真美はご飯に細かいレタスを敷き詰め、下の方に茶色のそぼろで土と茎を描き、桜でんぶと卵でピンクと黄色のお花を咲かせていた。

「おれも、このはっぱのせる!」
「うん。じゃあがっくん、このレタス使って」

岳はレタスを全体的にパラパラとまぶしていった。

「おおー、彩り良くて美味しそう!」
「へへー。じゅんのは?」

えー?と、潤は自信なさげにどんぶりを見せる。

「なんか、男の豪快飯って感じかな」
「ふふっ、美味しそうですよ。鷹の爪の赤色がいいアクセントになってて」
「うん、美味しそう」
「じゃあ、食べましょうか」

いただきます!と3人で声を揃えてから、早速食べ始めた。

「おいしい!」
「良かった。自分で盛りつけると美味しいね。がっくん、よく噛んで食べてね」

真美は潤にも声をかける。

「課長、お口に合いますか?」
「うん、美味しいよ。特にこの青菜。酒が飲みたくなる」
「ふふっ。じゃあ、あとで少し容器に入れますから持って帰ってください。がっくんが寝たあとの晩酌にどうぞ」
「え、いいの?」
「はい。あ、そのどんぶり、半分くらい食べたら韓国海苔を載せて、お茶漬けにしませんか?」
「する!それいい!」

3人でお腹いっぱい食べ、楽しく食事を終える。

夜の7時になり、荷物をまとめると潤は真美に向き直った。

「望月、今日はほんとにありがとう。丸一日お世話になって」
「こちらこそ。おゆうぎ会、とっても楽しかったです。がっくん、今日はありがとう。また遊ぼうね」
「うん!またな、まみ」

今日は電車で帰る潤と岳を、真美はマンションのエントランスから手を振って見送った。