「がっくん、今日はがんばったね!かっこ良かったよー。お昼ご飯、何食べたい?」

保育園をあとにすると、気を取り直して真美は岳に尋ねた。

「えっとね、ギョウザ!」
「おお、ギョウザか!じゃあお昼からギョウザパーティーしちゃおう。がっくん、作るの手伝ってくれる?うちにね、ギョウザパックンあるんだ」
「だれ?ギョウザパックンって」
「あはは!パックンはね、ギョウザを作る天才なの」
「なんだそれー?だれだよ。まみのうちにすんでるのか?」
「そうだよ」
「じゅん!やばいぞ。まみをとられちゃう」

はあ……と潤はため息をつく。

「岳、この際はっきり言っておく。俺達は恋人同士じゃない」
「だれ?おれたちって」
「だから俺と……、まみちゃん」

ヒクッと真美は、岳と繋いだ手に力を込めてしまった。

「てれんなって。おれ、だれにもいわないからさ」
「言ってるだろ?!しかもあっちこっちに」
「おれからは、いってない。きかれたらこたえる。うそつくのはよくないからな」
「だから、嘘じゃないってば!」

エンドレスなやり取りをしているうちにスーパーに着いて、真美はギョウザの材料と岳の好きなお菓子をカゴに入れた。

「ごめんな、望月。またうちに上がらせてもらうことになって」

潤がレジでクレジットカードをサッと差し出しながら、小声で真美に謝る。

「いいえ。私ががっくんと一緒にいたいだけなんです。つき合ってくださって、ありがとうございます、課長」

すると手を繋いでいた岳が、パッと顔を上げた。

「やっぱりつきあってるんだ!ほらな、じゅん。おとこらしくみとめろよ」
「バカ!違うったら」
「バカっていうやつがバカなんだぞ?」

うう……と潤は言葉に詰まる。

その後もがっくりとうなだれたまま、潤は大人しく真美と岳のあとをついていった。