「プログラム5番。たいようぐみさんによる『シンデレラ』です」

ついに来たー!と、真美は固唾を呑んで舞台を見つめる。
隣で潤もスマートフォンを構えた。

物語の始まりを告げるように音楽が流れ、ゆっくりと幕が開く。

青いマントに三角帽子を被り、手に星のステッキを持った、魔法使い役の女の子が立っていた。

「むかーし、むかし。あるところに、こころのきれいなおんなのこがいました。なまえは、シンデレラ。きょうもおうちのおそうじをさせられています」

魔法使いが舞台袖に消えると、入れ違いにエプロン姿のシンデレラがほうきを持って現れる。

「あーあ、わたしもおしろにいって、おうじさまとダンスをおどりたいな」

すると綺麗なドレスを着た姉と継母役の女の子が、パタパタと小走りで登場した。

「シンデレラ、ちゃんとおそうじするのよ」
「わたしたちは、これからおしろにいってくるから」
「すてきなおうじさまと、ダンスをおどるのよ!」

たのしみー!と声を揃えると、またパタパタと去っていく。

「わたしもいきたいわ。でも、ドレスじゃないから、むりよね」

そう言ってシンデレラは、舞台の端に置かれた木の椅子に座る。

そこへ先程の魔法使いが現れた。

「こころのきれいなシンデレラ。あなたにまほうをかけましょう」

魔法使いが星のステッキを振ると、シャララーン!と音がした。

「え?これはいったい、どういうこと?」

シンデレラが立ち上がると、舞台袖から手作りの大きなかぼちゃの馬車がスーッと入って来て、シンデレラの姿を隠す。

そして今度は美しいブルーのドレスを着たシンデレラが現れた。

「シンデレラ。さあ、おしろへ。でもわすれないで。まほうは12じにきえてしまうの」
「わかったわ。ありがとう!まほうつかいのおばあさん」

『こうしてシンデレラは、かぼちゃの馬車に乗ってお城へと向かいました』

ナレーションのあと、一度幕が閉まる。
再び開いた時には、背景はお城の絵に変わっていた。