「あー、楽しかった!素敵な一日だったね」

披露宴を終えてマンションに戻って来た都は、ソファに座って岳と樹に笑いかける。

真美と潤は、今夜はいつものスイートルームに泊まることになっていた。

それももちろん、樹の計らいだ。

「ほんとにな。二人の幸せそうな姿にこっちまで嬉しくなったよ。それに、岳!リングボーイ、かっこ良かったぞー!」

樹が岳を高く抱き上げると、岳ははしゃいだ声を上げた。

「キャハハ!おとうさん、わきのしたはやめて!くすぐったい」
「お?そうか。それならもっとくすぐるか!こちょこちょー」
「ウヒャッ、まじでやめろ!」

じゃれ合う二人に、都が声をかける。

「ほら、二人とも着替えてらっしゃい。せっかくの服がしわくちゃになるわよ?」
「えー、おれ、もっとこれきたい」
「あら、そんなにそのタキシード気に入ったの?でもなー、もう着る機会はないかも」
「それなら、ママとおとうさんのけっこんしきやれば?おれ、またリングボーイやってやるからさ」

え……と、二人は言葉を失った。

「あれ?おれ、なんかへんなこといった?ママとおとうさん、もうけっこんしきやったの?」
「ううん、やってない」
「じゃあ、ママはまみみたいな、おひめさまのドレス、まだきたことないの?」
「うん、きたことない」

すると岳は樹に膨れてみせた。

「だめじゃんか、おとうさん。ママをおひめさまにしてあげないと。おとことして、なさけないぞ?」

樹は震えそうになる声を必死で堪えた。

「うん、そうだな。情けないよな」
「じゃあ、けっこんしき、やりなよ?」
「分かった。ママをお姫様にする」
「やったー!そしたらおれのこのふく、ちゃんとしまっておいてね。またきるから」

イエーイ!リングボーイ!と、岳は無邪気に飛び跳ねている。

都と樹は涙を堪えながら見つめ合っていた。