「ねえ、どこいくの?」

歩き始めると、岳が真美を見上げて聞く。

「ん?私のうち。そこで課長を待とうね」
「かちょー?って、だれ?」
「えっと、だから、岳くんの叔父さんだよ」
「じゅんのこと?まみ、じゅんってよばないの?」
「うん。だって上司だもん。私よりえらい人なの」
「かのじょなのに?」

うぐっと真美は言葉に詰まる。

「そ、そうなの。色んなカップルがいるのよー。あはは」

乾いた笑いでごまかしながら、歩いて5分ほどのマンションに帰って来た。

「ただいまー。岳くん、ここが私の部屋だよ。どうぞ上がって」
「おじゃまします」
「おっ、ちゃんとご挨拶出来るんだね。えらいね」
「こんなの、ふつうだよ」

岳はしれっとしながら靴を脱ぎ、きちんと揃えてから部屋に上がる。

「岳くん、洗面所はここね。あ、待って。ステップあるから」

真美は折りたたんでしまっていた踏み台を開いて、岳の前に置いた。

ステップの上で小さな手を伸ばしてゴシゴシ洗う岳に、真美は思わずふふっと笑う。

「なんだよ?」
「ううん。なんか可愛いなーと思って」
「こどもあつかいするなよ」
「あはは!うん、分かった。大人扱いするね」

二人でうがい手洗いを済ませると、岳に麦茶を入れてから真美はキッチンに立つ。

「岳くん、マカロニグラタン好き?」
「うん!すき」
「ふふっ、じゃあすぐに作るね」

真美は早速マカロニを茹でながら、もう一つの鍋にバターや小麦粉、牛乳を入れてホワイトソースを作る。

「岳くん、ツナとコーンとソーセージ好き?」
「だいすき!」
「あはは!いいねー。じゃあたくさん入れちゃおう。手伝ってくれる?」
「うん」

真美はフリーザーからスイートコーンの袋を取り出し、岳の前のローテーブルに小皿と一緒に置いた。

「好きな分だけ、このお皿に入れてね」
「わかった」

袋を手にした岳は、つめたっ!と目を丸くする。

その様子が可愛くてたまらず、真美は思わず目を細めた。