改めて結婚の時期と引っ越しについて話し、そういうことならと、両親も快く事情を受け入れてくれた。

和やかに食事を囲んでから、二人は実家をあとにする。

「潤さん、結局寸劇出来ませんでしたね」

帰りの車の中で真美がそう言うと、潤はふっと頬を緩めた。

「いいよ。だってちゃぶ台じゃなかったし、実際にバシャーってお茶をこぼしたら、拭くのが大変だから。でもお父さんはやってみたかったのかな?お前に娘はやれるかー!ってやつ」
「ふふふ、どうかな?ちょっと憧れてるんじゃないかって、お母さんは言ってたけど」
「それなら今度、お酒飲んだ時にでもお父さんとやってみるよ」
「あはは!楽しそう。私、ビデオ撮るね。お母さんと一緒に」
「うん。お母さんに、『はい、カットー!』って言ってもらわないとな」

真美はお腹を抱えて笑い出す。

「もう想像するだけで笑えちゃう。絶対やってね、潤さん」
「ああ。だけど今日は本当に良かった」
「え?何が?」
「俺、最初はこれでもかってくらい緊張してたけど、お父さんとお母さんの言葉に感動したよ。お二人から真美の話を聞けて良かった。素晴らしい日になったよ」
「潤さん……」

真美はまたしても涙が込み上げてきた。

「真美、家族が増えるっていいな。真美と結婚すると、温かい世界が広がっていくような気がする」
「私もです。潤さんと結婚すれば、がっくんやお姉さん、樹さん、それにお父さんとお母さんとも家族になれる。毎年お正月に楽しく集まれるんだって思ったら、とっても嬉しくて。幸せへの扉が開けたような気がします。なんだか大げさかな?」
「そんなことない。俺もそう思うよ」

信号が赤に変わり、潤はブレーキを踏んで真美を見つめる。

タンポポのような可愛い真美の笑顔に目を細めると、そっと肩を抱き寄せて優しくキスをした。