「まみー!あいたかった」

玄関で飛びついて来た岳を、真美はしっかりと抱きしめる。

「がっくん!私も会いたかった。元気にしてた?」
「うん!ゆずちゃんとか、けいくんも、まみにあいたいっていってたぞ」
「そうなんだ。私もみんなに会いたいなあ。また保育園に遊びに行ってもいい?」
「いつでもこいよ。まってるから」
「ふふっ、ありがと」

相変わらず元気な岳の様子に、真美はホッと胸をなで下ろした。

「いらっしゃい、真美ちゃん、潤。来てもらって悪いわね」
「いいえ、とんでもない。お邪魔します」

都と明るく挨拶すると、まずはコーヒーを飲みながら雑談する。

岳がいる間は、本題に入れなかった。

「お姉さん、これ。遅くなったけど、ちょっとしたクリスマスプレゼントなんです。よかったらがっくんと使ってください」

真美は潤と出かけた日に買ったマグカップを差し出す。

「ええ?そんな、いいのに。でもありがとう!なんだろう……。岳、まみちゃんからまたプレゼントもらったわよ。開けてみる?」
「うん!」

岳は都と一緒にラッピングされた箱を開けた。

「わあ、お揃いのマグカップ?素敵ね。真美ちゃん、ありがとう!」
「まみ、ありがとう!これでココアのむー」
「はいはい。今入れるわね」

都はマグカップを軽くゆすぐと、ココアを入れて冷たいミルクと混ぜた。

「がっくん、飲みやすい?」
「うん!そうだ、まみ。おれ、あのカメラでたくさんしゃしんとったんだぜ?」
「ほんと?見せてくれる?」
「うん!」

岳と真美はソファに並んで座り、カメラの画面を覗きながら楽しそうに話し出す。

その様子を見ながら、都が小声で潤に話しかけた。

「ね、同棲始めたの?真美ちゃんと」

潤はカップを持つ手を止めて、チラリと都に視線を向ける。

「隠してもバレバレだって。夕べ何時に電話したと思ってんの?夜の11時よ?真美ちゃんの予定聞いてみるって言うから、てっきり一旦切るのかと思ったら、『真美、姉貴が俺と真美に相談したいことがあるんだって』なーんて聞こえてくるんだもん。私、きゃ!って声出ちゃったわよ」
「……同棲は、まだしてない。年明けに真美のご両親に挨拶に行ってからにする」
「やだ!すごいじゃない!男になったわねー、潤。プロポーズは?」
「改めて機会を見てから」
「そうなのね!だったらさ、私がデザインしてもいい?婚約指輪」

潤は今度は正面から都と顔を合わせた。

「うん。そうしてくれるとありがたい」
「任せなさいって!真美ちゃんの左手薬指のサイズも、さり気なく測っておいたんだー」
「ええ?!いつの間に?」
「だって、これはもう潤と結婚してもらわなきゃ!って意気込んでたからね。良かったわね、潤」
「ああ。それで、姉貴の方は?何があったんだ?」

すると都は、うーん……と少し顔をしかめる。

「真美ちゃんにもきちんと説明したいから、あとで岳がお昼寝したら、改めて二人に話すわ」
「分かった」

デリバリーで頼んだピザを4人で囲み、賑やかに食べ終わると、真美はソファで岳を寝かしつけた。

「ありがとう、真美ちゃん。今紅茶を淹れるわね」

都はティーポットを持ってダイニングテーブルに着くと、二人に改まって話を始めた。