夏休みのある夜、泊まりに来た友達がこっくりさんという遊びをやりたいと言い出した。
枕を並べて恋バナをするのにも飽きてきた頃だったから、私ともう一人の子も乗り気でOKを出して。
「こっくりさん、こっくりさん。どうぞおいでください」
私たちは十円玉に指を置いて、ネットで見た言葉を同じように唱えた。
紙に書いた鳥居。「はい」と「いいえ」。五十音。数字。
三人の人差し指を乗せた十円玉を注視すること暫し、もう一度、同じ言葉を繰り返す。
「こっくりさん、こっくりさん。どうぞおいでください」
すると、ゆっくりと十円玉が「はい」の方へ動き出した。
私たちは本当に動いたことにびっくりして、ついつい顔を見合わせる。
「来た!」
「し、質問どうする?」
「告白上手くいくか聞いたら?」
「ええっ」
私たちはそれぞれ、好きな人と両想いかどうかを尋ねてみた。
結果は何と、皆「はい」!
私たちは夜中にも関わらずきゃあきゃあと声を上げてしまう。
楽しくなって、その後もいくつか質問を重ねたけれど。
「何かずっと『いいえ』ばっかりだね」
あるときから、どんな質問にも十円玉が「いいえ」に動くようになった。
日本の首都がどこか聞いてみても「いいえ」。
今何時か聞いても「いいえ」。
「……こっくりさん、そろそろ帰りたいとか?」
「うわ、有り得る」
「ウチら引き留めすぎたってこと?」
「そろそろ寝よーよ。さっき隣室から壁叩かれたし」
「え、マジ!? やば」
ひそひそと声を小さくしながら、私たちは終わりの呪文を唱えることにした。
「こっくりさん、こっくりさん。どうぞお帰りください」
でも十円玉は、「いいえ」から動かない。
困ったことになった。
こっくりさんをやっている間は、十円玉から指を離してはいけないのだ。
何でも指を離すと、十円玉に降霊したこっくりさんが悪さをしてしまうらしい。
私たちは根気よく終わりの呪文を唱え続けた。
「こっくりさん、こっくりさん。どうぞお帰りください」
そのとき、外から扉の閉まる音が聞こえた。
私たちが再び顔を見合わせた直後、十円玉が鳥居のほうへ動く。
こっくりさんがようやく帰ってくれて、私たちはホッとした。
その翌朝、隣の部屋に警察が来た。
枕を並べて恋バナをするのにも飽きてきた頃だったから、私ともう一人の子も乗り気でOKを出して。
「こっくりさん、こっくりさん。どうぞおいでください」
私たちは十円玉に指を置いて、ネットで見た言葉を同じように唱えた。
紙に書いた鳥居。「はい」と「いいえ」。五十音。数字。
三人の人差し指を乗せた十円玉を注視すること暫し、もう一度、同じ言葉を繰り返す。
「こっくりさん、こっくりさん。どうぞおいでください」
すると、ゆっくりと十円玉が「はい」の方へ動き出した。
私たちは本当に動いたことにびっくりして、ついつい顔を見合わせる。
「来た!」
「し、質問どうする?」
「告白上手くいくか聞いたら?」
「ええっ」
私たちはそれぞれ、好きな人と両想いかどうかを尋ねてみた。
結果は何と、皆「はい」!
私たちは夜中にも関わらずきゃあきゃあと声を上げてしまう。
楽しくなって、その後もいくつか質問を重ねたけれど。
「何かずっと『いいえ』ばっかりだね」
あるときから、どんな質問にも十円玉が「いいえ」に動くようになった。
日本の首都がどこか聞いてみても「いいえ」。
今何時か聞いても「いいえ」。
「……こっくりさん、そろそろ帰りたいとか?」
「うわ、有り得る」
「ウチら引き留めすぎたってこと?」
「そろそろ寝よーよ。さっき隣室から壁叩かれたし」
「え、マジ!? やば」
ひそひそと声を小さくしながら、私たちは終わりの呪文を唱えることにした。
「こっくりさん、こっくりさん。どうぞお帰りください」
でも十円玉は、「いいえ」から動かない。
困ったことになった。
こっくりさんをやっている間は、十円玉から指を離してはいけないのだ。
何でも指を離すと、十円玉に降霊したこっくりさんが悪さをしてしまうらしい。
私たちは根気よく終わりの呪文を唱え続けた。
「こっくりさん、こっくりさん。どうぞお帰りください」
そのとき、外から扉の閉まる音が聞こえた。
私たちが再び顔を見合わせた直後、十円玉が鳥居のほうへ動く。
こっくりさんがようやく帰ってくれて、私たちはホッとした。
その翌朝、隣の部屋に警察が来た。