「本当はすぐにでも迎えに来たかったんですが、国への登録だのなんだのがややこしく時間がかかりましてね。こうしてギリギリになってしまって、申し訳ない。旦那様に話を持ち掛けてきた貴族は俺より身分が低いので、俺がエリス様と結婚したいと申し出たらしぶしぶ手を引いてくれました。なのでエリス様は好きでもない男と家のために結婚する必要はありません」

 そう言ってから、隣に座るエリスの方に体を向けて、エリスの顔をじっと見つめた。

「そういうわけで、エリス様。俺と結婚してくれませんか?俺と結婚すれば、この家は無くなることはない。侯爵家の次男として財産は確保していますので家の再建は可能です。それに、エリス様の言う一途に愛し合う結婚もできます。俺は、エリス様と結婚したらエリス様しか見ません。他に恋人を作ったりしないし、作ることも許さない」

 最後の言葉に心なしか力がこもっている。エリスが驚いた顔でディルを見つめていると、ディルはにやりと笑って言った。

「エリス様は俺のことお嫌いですか?てっきり俺のことを好きでいてくれていると思ってましたが」
「な、な、何を言って……!」

 ディルの言葉に、エリスの顔は一気に赤くなる。そんなエリスを見てディルは楽しそうに笑い、エリスの両親も嬉しそうだ。

「ディルが貴族のご令息だったなら、すぐにでもエリスと結婚させてあげられるのにといつも思っていたんだよ。こうして夢がかなうだなんて……本当に、本当にありがとう、ディル」
「いえ、俺はこの家に拾われてずっと幸せに暮らしてきました。恩返しができてこちらこそよかったです。あ、でも」

 そう言って、ディルは少し寂し気な顔でエリスを見る。

「まだ、エリス様の口からはっきりと了承をもらっていません」
「そうだな、エリス、どうなんだ?」
「え、そんな、急に言われても、って、困ります!いえ、困らないのですけど、困ります!」

 顔を真っ赤にしてたじたじになるエリスを見て、ディルも両親も声を上げて嬉しそうに笑っていた。