ディルに連れられて両親の元にやって来ると、両親は目を輝かせてエリスとディルを迎えた。

「エリス!ディルが、エリスと結婚したいと言うんだ!」
「え?」

 きょとんとした顔で隣のディルを見ると、ディルはいつものようににんまりと笑う。一体どういうことかわからず首をかしげると、父親が嬉しそうに話し始めた。

「ディルは実は侯爵家の次男なんだそうだ!」

 身寄りがないと思われていたディルは、実は侯爵家の次男だった。親たちの継承争いに巻き込まれ、誘拐されたうえに捨てられたところを、エリスの父親に拾われたというのが真相だ。
 ひと月前、たまたま街を歩いていた時に、兄だと名乗る男に声を掛けられる。腹違いの兄で、お互いの両親が相次いで亡くなり家を継いでから、ずっとディルを探していたらしい。

「両親のように険悪になるのではなく兄弟で仲良くしたい、そのためにずっと探していたと言われました。ですが、実際のところは後から自分にも侯爵家を継ぐ資格があると言われるのが嫌だったんでしょう。言われる前に最低限の地位と待遇を与えてしまえと思ったんでしょうね。俺は今の生活で満足しているからと断ろうと思っていたのですが、今回のこともあって、侯爵家の次男という地位を有効利用させてもらうことにしました」

 ディルの話にエリスの両親は嬉しそうに笑っているが、エリスは相変わらずぽかんとしている。あまりに突然すぎて、何がなんだかわからない。