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「解散だわ」


「なんでえ!?」


上に向いた人差し指と小指がへにゃりと力をなくす。質問にたいしての答えは予想だにしない言葉で返された。
解散、解散、解散。
頭の中で何度か唱えて飲み込んで、やっぱり信じられなくて再度「なんで?」と問う。


「俺たちさ、恋愛の曲がやりたいんだよ」


「れ、恋愛の曲って、そんな、ワンチャンデスメタルでもいけるんじゃないの?」


「できるかもしれないけど、デスメタルっていう音楽ジャンルでは伝わりづらいだろ?バズらないし」


「バズるバズらないで私たち音楽やってないじゃん、ただ自分たちがやりたい音楽を…」


「俺たちはデスメタルをやりたいともう思わなくなったんだよ。最近流行りのロックバンドが歌うような恋愛ソングをやりたい、バズりたい、モテたい」


「なんか最後に薄汚い欲望ついてるけど」


そんな緑色の髪と紫色の唇、目元に星マークなんて貼り付けてよく流行りの恋愛ソングがなんだと言えたものだ。

ギターの迫本、ドラマの前川、ベースの浜松。そして紅一点ボーカルの私で組まれたこのバンドは小さなライブハウスを拠点とし、デスメタルをやっていた。

私は高校生で、迫本は大学生、前川は専門学生に、浜松はフリーターというあまり接点のないメンバーではあったがデスメタル好きという共通点とノリの良さで集まった私からしたら思い入れのある大好きなバンドであった。

そこそこファンもついているし、いつかは武道館でなどと色々妄想を繰り広げていたのは昨日まで。

どうやら私以外方向性を変えたらしい。


「春宮」


「なによ」


「解散しない方法が1つある」


「な、なに?どうすればいいの?」


ギターの迫本に縋るようにそう聞けば、迫本はドヤ顔でこう言った。



「次までに青春恋愛ソング、作ってこい」



地獄の始まりDeath。