「一体なにがあったの?」

 少女が人ごみをかきわけて、なんとか一番前へ行くと、探していたスタンがうずくまっており、剣を持つ男の姿が見えた。

「ちょっと、スタン!? なにやってるのよ!? 探したんだからね!!」
「へっ!? セ、セイラ様!? す、すると、あっちのセイラ様は……?」

 スタンが、セイラとノキアの顔を見比べる。
 セイラとノキア、またデュランも、ふたりの瓜二つな風貌に驚きたたずんでいた。

「これは、驚いた……。こうもそっくりな人物がいるとは」

 ふたりを見比べると、ノキアの髪が若干青みがかっているのと、目の色が違うだけ。それ以外では、ほぼ見分けはつかない。
 四人は、人目につかない場所へ移動し、今までの経緯をセイラに話した。

「見間違えた!? ばっかね~、全然服装が違うじゃない!」

 セイラは、スタンを罵倒した。

「いや、しかし、こうもそっくりな人間がいるとは思わないだす……」

 スタンも、主人であるセイラの前ではたじたじであった。

「それもそうね。ふぅーん……」

 セイラは、ノキアをじろじろ見つめて自己紹介した。

「私、セイラ。あなたは?」
「私は……ノキアだ。こっちは、一緒に旅をしているデュラン」
「旅人なんだぁ。いいなぁ、わが道を行く! って感じで。あ、こいつはお目付け役のスタン。ヘマばっかりするけど、結構いいヤツよ」
「ひどいだす……今回のことだって、元はと言えば姫様が迷子になったせいで……」
「なんか言った?」

 ぶつぶつと言うスタンに対し、セイラが睨んだ。

「いえ、別に……」
「うっふっふっふっふ。私、いいこと考えちゃった」
「……なにか、嫌な予感がするだす」

 セイラは、きらきらした瞳でくるりと振り向いて、ノキアの手を取る。

「ねえ、ノキア。あなた、1日王女様体験、してみない?」
「はあ!?」

 ノキアとデュランが、同時に叫んだ。