「ひめさ……じゃない、セイラ様ーセイラ様ー、どこだすかー? まったく、ちょっと目を離したスキにこれだから……。迷子になった時の、落ち合い場所を決めておけばよかっただすね……」

 ここでもまた、人を探している男がいた。言葉は少しなまっている。しかし、こう人が多くては探しようもなく、また名を呼ぶ声もかき消されていた。

「仕方がないだすね、ほとぼりが冷めたらお城に戻ってくるでしょうし、オイラは一旦城に戻って……ん?」

 その時、男の視界に見知った少女の姿が入った。

「セイラ様!? セイラ様ー!!」

 男は懸命に名を呼ぶが、少女は振り向かない。男は、人ごみをかきわけて、少女の元へ急ぐ。

「セイラ様!」

 男が少女の腕を掴み引っ張ると、少女がもう一方の手で掴んでいたものが離れた。

「な、なに?」
「セイラ様、こう人ごみがすごくては大変だす。もう少しひと気のないところへ行きましょう!」
「え? なに? おまえ、誰だ!?」