男の子はいきなり恋の名前を呼んだ。


「会いたかった。僕もだよ。僕もあやかし狐!。」


 男の子は一度ドロン!と音を立てて狐に変身して見せた。
 そしてすぐ白い煙をあげて人の姿に戻る。
 さらさらの黄金色の髪に鳶色の目をした男の子は、恋の方を見てにこっと笑った。

 
「紹介が遅れてすみません。僕は律、苗字はこの世界では使っていません。元居たところは君たちと同じ所で、住んでた所も多分近いんじゃないかな。僕はこの世界の魔法監視員をしてます。君たちからするとボスに当たるけど、あんまり形式ばって考えなくて良いですよ。体質がこの世界にぴったりで、魔力の倍掛けが当たって、こっちの世界の役員を特別に頼まれて。向こうの家族には悪いけど、一人で仕事をしてるんです。あ、あやかし狐なのは向こうの家族みんなです。魔法のレーダーを使って、いつもあやかし狐居ないかなって探してたんだけど、こっちの世界では珍しいみたい。恋が来ることは、ちょっと前から分かって、ずっと気にしてたんですよ。恋に関しては調べました。年は僕の一つ上、好物はキャラメルとキャラメルチョコレート。趣味は絵を描く事で、嫌いな物は昆虫。恋人が居るのにはがっかりしたけど、そこは差し引いて考えても、僕の良い姉さん狐になる素質がある。
宗介と䄭風は……」


 とそこまで一気に喋った律に、宗介が言った。


「彼氏、僕は恋の。」

「そうなんですか?」

「僕も準彼、新田さんの。」


 䄭風が言った。


「悪いけど、君の姉狐にはちょっと。大事にしてるから。他を当たって貰えるかな?。」


 宗介は警戒心を顕にして律に言った。
 律はがっかりした色を見せない。

「うーん、そうですか。」


 律が言った。

「僕気に入ったもの手放さない質で。よく言われます、がめついって。照れますよね。よろしくお願いします、ね、恋。」

「名前呼び……」

「ここではみんな名前呼びですよ。一応あなたがたのボスなんで。」


 それから律は避難所長と話を始めた。

 恋と宗介と䄭風は部屋に入り、ピカピカのキッチンや居心地の良いリビングを通って、大きなベッドと机のあるそれぞれの部屋に入った。


 これから何が始まるのか。