宗介と䄭風が呼んだところで、恋は辺りの景色がガランと変わったのに気がついて衝撃を受けた。

 そこは森だった。
 周りに大きな緑の木が生え、いつのまにか地面は土になっていた。


「何これ……」


 白い煙が薄らいで、宗介と䄭風と恋はようやくお互いの姿が見えるようになった。


「何だここ?」


 宗介が恋の隣に移動しながら言った。


「異世界?」


 䄭風が首を傾げて言った。


「かなあ。そんなはずある?」

「おかしい、さっきまで勉強してたのに。」


 いつのまにかテーブルは消え、3人は森の真ん中に立っていた。
 太陽の光が、直接恋の髪を照らして透けさせている。

 と、すぐに向こうから今度は唸り声が聞こえた。


「グルルル……」


 見ると真向かいから灰色の狼のようなモンスターが一匹、こちらを睨んでいた。
 あっと思う前に、モンスターはこちらへ向かって走り出していた。


「危ない!」


 あともう少し、という所で、宗介と䄭風の手から、強い銀色の光のような物が出てモンスターを直撃した。

 宗介と䄭風は驚いた顔をした。

 いつのまにか手に杖を持っていたのだ。

 銀色の光が当たると、モンスターは灰になって消え失せた。


「何だこれ……」

「さあ……」


 宗介と䄭風は不審そうに杖を見た。


「魔法?」

「だよねえ。宗介と樋山くん、魔法使いだったの?」

「そんなはず……」


 見回すと、一応道があり、見下ろすと町に繋がっている様だった。

 詳しく見てみると周りには鬱蒼とした木の他に何もなかった。
 図書館だったらしい所は微塵も見当たらず、ただ自然の風景があるだけだった。


「とにかく、ここに居ても仕方ない。町へ下ろう。」


 宗介が言って、ポケットにさっきの杖を入れると3人は道を歩き始めた。