「しっかしルミちゃんも大変だね。安いもんでもないのに、月1で一箱買ってくだろ?」


 学校ではサトルと呼ばれ慣れているから、急に名前で呼ばれるとドキッとする。


 佐東(サトウ) 瑠美(ルミ)、それが私の名前だ。ミサキがふざけて、私をサトルと呼びはじめた。それが今やすっかり定着してしまった。


「仕方ないじゃないですか。一箱12枚、その中でも良い音が出せるは一枚あるかないか。薄っぺらいクセに欠けちゃったら、音色も音程も変わっちゃうんですから」


 エイゴさんは「ゲームの10連ガチャみたいだな」と笑った。


「ま、音色とか音程に拘ってやるのもいいけど、俺らみたいに全力でパワー出しきるのも楽しいぞ」


 エイゴさんはドラムを叩く振りをしてそう言ったけれど、私には兄達の奏でる音楽が分からない。

 それは、ただの、不快な雑音。