ライブハウスに入ると、舞台の上の暗がりに彼の姿を見つけた。


 照明が回転すると、一段と大きな歓声があがる。


 その瞬間、照らされたステージの上で、ドラムが激しいビートを刻む。
 縦横無尽に駆け抜けるベースラインが、足の裏から頭のてっぺんを突き抜ける。
 そこに広がるように乗っかったギターに、激しく答えるタスクの燃えるような歌声。


 体が勝手に動いて、彼の歌声に答えようとする。


 唇を震わせ言葉を紡ぐ彼を見つめると、見たことのない彼の瞳が私を捕らえる。その瞬間、彼はニヤリと口角をあげ、ギロリと白い歯を光らせた。


(なにこれ……)

 彼の歌声に噛みつかれた私は、思いのまま叫ぶ。その声も一丸となって、彼の歌声が小さなライブハウスを熱気でいっぱいにする。


(気持ちいい!)

 
 私は、彼の歌声が、好きだ。