城が丘高校2年4組出席番号1番、合津(アイツ) (タスク)。そのヒーローのような名前とは裏腹に、根暗で陰キャな彼。影の薄い人だと、私もこの間までは思っていた。


(今日も本読んでる……)


 目の下まで伸ばして整えていないボサボサな癖っ毛の前髪。後ろ髪も寝癖のままなのか無造作。アイロンのかけられていないシャツは、なんだかダサい。


 おまけに、声が小さいくせにマスクなんかしているから、何か言っても、多分誰も気づかない。いつも教室の隅の席で本を読んでいる彼は、誰にも話しかけないだろうけど。


「サトル、また見てる」
「え?」


 友人のミサキに声をかけられ、我に返った。


「無意識? 今日3回目だよ」
「マジで? ははっ!」


 私は隠すようにわざとらしく笑った。


「校内ダサ男選手権とか、空気にしか見えない選手権でもあれば、彼も注目あびるんだろうけど」
「それ、空気なのに注目浴びちゃってるから!」


私の突っ込みに、「ほんとだ」とミサキも笑った。



でも、私は知っている。彼が作り出す空気が、すさまじい熱気になることを。