「そこのバイク止まれ」
鳴り響くサイレンの中、
テレビで聞くよりも、迫力のある警察の声。
警察は拓真とリン君の間を抜け出ようと突っ込んできたが、拓真が斜めに入り、それを妨害した。
「リン、もっと広がれって」
「次の信号、左な。
ホームセンターの脇に、車入ってこれない巻き道ある。
そっちの車線、抜かれんなよ」
「はあ〜?
誰に言ってるんですか〜」
二人のやり取りを、拓真の後ろでボーッと聞いていた私は、
不思議と、恐怖は無かった。
それは多分、お酒のせいではなく、拓真の後ろに乗っているという安心感。
真後ろで鳴り響くサイレンの音さえも心地良く感じ、こんな状況なのに、空を見上げる余裕さえあった。
「……。」