「…綺麗ですね」
車のフロントガラスいっぱいに見える、無数のテールランプとパトカーの赤色灯に、私は見とれながら呟いた。
「綺麗でしょ。
私も単車を降りて初めて、走るよりも、後ろから見るこの景色を好きになったんだよね」
ついこの前までの現実が、まるで夢だったかの様に、
この眩しすぎる景色は、私の心に染み付いた嫌なものを、綺麗に洗い流してくれるようにさえ感じ、
しばらくフロントガラス越しに、ボーっと眺めていると、
ふいにマドカさんが呟いた。
「…見てるかな、あいつ」
「‥‥‥。」
タバコを吸っていた真也さんは灰皿に灰を落とし、静かに答えた。
「…ああ」