ユミは、夕暮れ時、公園にいた。


そして、ブランコに乗っていた。


ユミは、俯いて”どうしたら、ケイコと仲直りできるんだろう・・・”


そのようなことを考えていた。


そんな時、タツヤが現れた。


「ほら。これ飲めよ」


と、タツヤは、缶コーヒーをユミに差し出した。


「ありがとう」


ユミは、無表情でそう言って、缶コーヒーを手に取った。





「どうしたんだよ。こんな所で。しかも、顔が暗いぞ」



タツヤが、言った。



「うん。ちょっとね・・・」



「なんだよ。なにか言いたいことがあるのなら言えよ。俺が相談
にのるから」



「タツヤじゃだめよ」



「どうして?」



「だって頼りないもの」



「なんだよ。それ・・・。せっかく心配してやってんのに」



「無理に心配してくれなくて良いよ」



「無理じゃないさ。本当に心配してるんだから」



しばしの沈黙の後。




「ありがとう」


ユミは、少し微笑んでそう言った。




「ユミが、やっと笑った」



「わたしだって、笑う時だってあるわよ」



「相変わらず。お前はひねくれてるな。もっと、素直に
なれよ」



「わたしは、素直だよ。タツヤだって素直になれば?」



「俺こそ素直だよ」



「嘘よ」



「どうして?」



「だって、わたしへの本当の気持ちを言えないじゃない」



「好きだ」



「えっ、どうしたの急に」



「だって、さっきお前が本当の気持ちを言えって」



「それはそれで、唐突すぎるわよ。心の準備ってものが・・・」




「好きだ。俺は、ユミが好きだ」




「だから・・・」



そして、突然、タツヤはユミにキスをした。




「タツヤ・・・わたしも・・・」



「わたしも、の次はなに?」



「わたしもタツヤと同じ紅茶が欲しかったんだ」



「えっ!? 俺の飲んでる紅茶でいいか?」



「ダメ。ちゃんと買ってきて。そしたら・・・」



「そしたら?」



「そしたら、家に帰るよ」



「またかよ。すっとぼけてんなぁ。分かったよ。買って
くれば良いんだろ。ちょっと待っておいて」



タツヤは、近くの自動販売機のほうへと歩いて行った。




ユミは、”ケイコ。ごめん。やっぱり、わたしはタツヤの
ことが・・・”


そのような事を思っていた。




もう、陽が落ちかけていた。







END