父親は真弓の迫力に気圧され、下を向いたまま顔を上げなかった。
「…5月の頭までに、用意しろ」
「……。」
「顔上げろコラ!!」
真弓はそう言って父親の髪をワシ掴みにし、無理やり顔を上げさせた。
「使った分の4万7千。
責任持って用意しろ」
「真弓…引き算、間違ってる。
3万7千…」
「…間違えた、3万7千。
来月までに必ず用意しろ」
「……。」
父親は目を背け、答えようとしなかった。
「返事しろや!」
「わ、わかった、用意…する」
すると真弓は、掴んでいた父親の髪を離した。
「尚美、荷造りするぞ」
「え…」
真弓はそう言って私の部屋の襖を開けた。
「あんた今日から、私と住め」
「…は?」
「いいからサッサと荷造りしろ!」
「は、はい…」
訳が分からないまま、私は真弓に荷造りをさせられ、
私達はリュックやダンボールに詰めた洋服や下着等を両手に抱え、アパートを後にした。