真弓の家の食卓に座る度、小さい頃から欲しかった物が、今も変わらないんだなと、いつも実感する。
それは、暖かくて心が安らぐ空間。
一番古い記憶を辿っても、家族で暖かいダンランをしたなんて記憶は、私には無い。
大人になったら、この傷は自然に癒えるのかな、なんて、この頃はよく考えていた。
「ご馳走さまー」
何やら急いでご飯を食べ終えた真弓は、食器をシンクに置くと、ボソッと呟いた。
「…さ〜てと」
真弓はそう言って、私を残し、1人で台所から出て行った。
「…?」
三人で顔を見合わせていると、次の瞬間、玄関のドアがバタンと閉まる音が聞こえた。
「……。」
まさかと思い、私は慌てて残りのご飯を口に入れ、使った食器を持って勢い良く立ち上がった。
「おばさん!
ご馳走さまでした!!」
「え!?あ、はい」
私は台所から飛び出し、玄関で靴を履き替え真弓の後を追った。