「真弓ちゃーん、
ガレキのホコリ危ねえから、マスクちゃんと付けな」
「ええー、苦しいからヤダー」
ビルを壊す仕事が始まると、チンピラ風の職場の人が真弓に遠くから叫び、
私は真弓がぶら下げるゴム製のマスクを両手で掴み、思い切り引っ張ってバチンと手放し、無理やり装着させた。
「いってえ!」
「私あっちでタイル剥がしてくるけど、今日は絶対サボるなよ。
お前のせいでまた残業になるから」
「…へいへい」
解体屋の仕事は割とバラバラに行う為、誰かがサボっててもそれを見張る人も居ないので、真弓がサボるとみんなにも迷惑がかかった。