4月。



私達は真弓の父親の紹介で、1ヶ月間だけ解体屋で働かせてもらえる事となり、今朝も赤いニッカの作業着に袖を通し、仕事へ出かける所だった。







「……。」










3DKのアパートに父親と二人暮らしの私は、部屋から出る時、必ず居間を通る。









「…仕事は?」




「……。」








早朝の7時前から、酒を飲んで寝転がりながらテレビを見る父親。




起伏の激しい内弁慶で、アルコールが回っていない時は無口で大人しいのだが、酔っ払うと変貌して家の中で暴れる、典型的な酒乱のダメ親父。




少しお金が入ると仕事を辞めてしまい、酒代やパチンコや麻雀で金が無くなると、また少しだけ働いては辞める事を繰り返していた。








「…行ってきます」







春から、綺麗な薄茶色に染め直したストレートで細い髪を一つに縛り、私は真弓の家へ向かった。