四面楚歌と呼ぶほど、そこまで最悪な状況を生きてきた訳ではないけど、
少なくとも、真弓と出会うまで、私には味方と呼べる人間が一人も居なかった。
「…え、
ちょ、ちょっと尚美!
あんたもしかして泣いてんの!?」
「……。」
小学校では、片親と言う事と、給食費すらマトモに払ってくれない父親のせいで、孤立やイジメなどに遭い、
家に帰れば毎日の様に父親から受ける暴力。
頼れる親戚も一人も居ない。
そんな状況を当たり前としていた私は、真弓の差し出す手の暖かさに、
今まで張りつめていた気が、一瞬だけ緩んでしまい、少しだけ目が潤んでしまった。
「宜しくな、真弓」
「えー、
今度は笑ってるし。
なんなのあんた!?
ボコられて頭でも打った?」
「あはは、打ったかも」
誰よりも強くなるという信念に、変わりは無い。
ただ、私にも一人くらい、こんな味方が居てもいいんじゃないかと、
運命を司る神様か誰かが、私に真弓をプレゼントしてくれたのかな、なんて、
そんな、臭くてバカらしい事を考えていた。