正直、見て貰ったからといって、3年は愚か、2年の先輩にだって勝てるとは思えない。

この頃は自分でも気づかない程、忍に妬みみたいな事をチクチクと言っていた。






「楢崎~」





その後、教室へ戻る最中、野球部の3年達に呼び止められ、俺と忍は先輩達の元へ駈け寄った。






「ちわっす」


「お前さ、エロビデオ買わない?」


「え‥」


「3本で2千円」


「‥‥‥」






ニヤニヤとする先輩達。

この頃は今と違い、先輩の言う事は絶対で、言われた言葉にNoという選択肢はない。


もちろん親や教師にチクる事などもってのほか。

それが昭和という古き時代。






「2千円すか‥」


「今持ってんの?金」


「いえ、無いっす」


「なら明日な」


「‥‥うっす」






隣には同じ1年生である忍も居るのに、カモにされるのは俺だけ。

やはり全てにおいて、俺と忍は違うのだなと、ここでもまた劣等感を植え付けられた。






「お前、エロビデオ好きなの?」


「いや‥買った事ねえし」


「断ってきてやろうか?」


「いや、いいよ‥。

先月の小遣いまだ余ってるし、ヘタに先輩に嫌われたら余計ヤバい事になりそうだし‥‥」


「‥‥‥」