野球の事はともかく、友達としては特に不満も無かったし、一緒に行動してて楽しかった。
「あ、マミちゃん先輩だ!」
「話しかけてみれば?」
「‥マジ?いいのかな?オレ平民だけど」
「なら貴族の俺が話しかけてやる」
入学から1ヶ月以上が過ぎ、この日俺は、初めて憧れの先輩と話す事となった。
「工藤先輩」
「?」
昼休み、バスケ部の友達と二人で体育館から出てきたマミ先輩に、忍は何の躊躇いも無く話しかけた。
「なんですか、少年」
「こいつが工藤先輩のこと好きらしいです」
「忍!?なに唐突にバラしちゃってんの!?」
「なるほど、状況は理解しました」
「理解しちゃったんすか!?」
出会った瞬間に告白みたいな形になってしまい、俺はあまりの急展開に動揺した。
「少年、名前は」
「あ‥‥大樹です」
「大樹ですか。
まるで大きな木の様な立派な名前ですね」
「あ、はい。そのままですね」
部活紹介の時から思っていたが、マミ先輩は何やらキリッとした感じの先輩だった。
「私はプロポーズは初めての経験ですが、少年のその勇気には真剣に答えさせてもらいます」
「いや、プロポーズはしてませんよ。
告白もしたつもりはないですけど」
「少し待って下さい」
「‥?」
マミ先輩はそう言って、なぜかその場にスッと腰を降ろして正座すると、背筋を伸ばして目を閉じた。
「あの‥これは何をなさって‥」
隣で見守るバスケ部のチカ先輩に尋ねた。
「これはおそらく、彼女なりの真剣に考える作法ですね」
「えと‥フザけてるわけでは‥‥」
「素だよ。マミちんはいつでも真剣」
「‥‥‥」