入学して1週間もすると、忍と小学校が同じだった野球部の仲間とも仲良くなり、外部からの入学だったにも関わらず、スグに皆と打ち解ける事が出来た。





「楢崎って肩もつえーよな。お前がウチに来るって分かってたら新しいミット買わなかったのに」


「え、別に同学年に捕手二人居てもいいじゃん」


「いやいや、お前に譲るよ。

忍の女房役とか荷が重すぎるし」


「まあ、それはたしかに。

じゃあ俺でもいいかしら、あなた」


「どっちでもいいけど、とりあえずバッテリーを夫婦って言うの廃止にしてくれ。

スゲー気持ち悪い」





有能な選手とのコンビ。

必然的にスカウトの目にも止まりやすい境遇。

この時俺は、それまで忍の捕手を務めていた仲間があっさり辞退してくれた事に内心大喜びしていた。しかし、





「外周終わったら1年は球拾いな」


「はい」


「西岡、お前は入れ」


「はい」





現時点で、俺は忍と一緒に練習出来ない。

それもそのはず。この時代は年功序列が何より優先される時代だったにも関わらず、忍は有能すぎて1年生は球拾いという王道から除外され、2.3年生に混じっての練習を強制される程に期待されていたから。





「先生、西岡のメニューどうします」


「北小の監督さんと相談してもう決めてある。

別メニュー以外はとにかく肩の故障だけ気をつけさせなさい」


「わかりました」