季節が変わり、その年の秋。






「やっぱ2年生主体か~。

まさか3年が引退しても球拾いと素振りやらされるとは思わなかった‥‥」






遠巻きに忍のピッチングを眺めながら球拾いに付いていると、忍の小学校時代の相棒だった雅紀が俺のボヤキに反応した。






「3年が居なくなった所で、球拾いをしてくれる奴が増えた訳じゃないからな」


「なんか段々と腹立ってきた。

雅紀は俺と辺見先輩、どっちが捕手として有能だと思う?」


「そんなのお前が一番分かってる事だろ。

そもそも丘小との試合、お前が居るからウチのチーム盗塁のサイン出なかったくらいだし」


「え、そこまで?自惚れていいとこ?」


「まあ、あの先生にそれを気づけって言ってもムダだろうけど」





野球経験はないが、プロ野球観戦が趣味の教師。


おそらくテレビの前でも監督になって、中途半端な知識でプロ野球選手にブツブツ文句を言っているのであろう。

そんな教師を見越してか、忍のリトルリーグ時代の恩師はわざわざ忍の小学校卒業と同時にウチの学校に足を運び、忍を大事に育ててくれと直談判しに来た。







「忍も楽しみにしてるしな、来年」


「え?」


「お前とのバッテリー」


「そうなの?」


「どんな失投もパスボールにしない捕手ってのは、投手にとってプレッシャーを柔らげる存在だからな。

あいつ笑ってたぞ、股間に直撃させようとした必殺のパームあっさり取られたって」


「あれマジでビビったんだけど」


「前に、俺じゃ荷が重いって言ったのは本音。

頼むぜ、忍のこと」


「ああ‥うん‥」