それから数日後の祝日、この日は部活が午前中だけだった為、午後に自転車で本屋へ行った帰り道での事だった。
「あ、やべ」
ペダルが突然カクンッと空回りしたかと思うと、チェーンが外れてしまい、俺は自転車から降りた。
「アチャー‥‥どうしよ」
家に向かうより手前に自転車屋はあった為、俺は仕方なく自転車を押して歩いた。
すると、
(‥‥あれ、あの人‥)
正面から歩いて来る男は、以前、野球部の先輩から俺を助けてくれた牧村先輩だった。
「あ‥‥こんにちは」
「?」
キャップをかぶっていた為、一瞬、俺の事が分からなかった様だったので、俺はスッとキャップを取った。
「ああ、野球部の」
「はい、えと‥
あの時はありがとうございました」
「おう。どこ行くんだ」
「あ、ちょっと自転車屋に‥」
「自転車屋?」
すると牧村先輩は、俺の自転車に視線を向けた。
「ああ、外れたんか?チェーン」
「はい」
「スタンドかけろよ」
「えっ、はい」
言われるがまま自転車のスタンドを掛けると、牧村先輩は地面にペタンとアグラをかいて座り、カチャカチャとチェーンを直し始めた。
「あ、汚れちゃいますよ、手」
「汚れたら洗うだけだろ」
「‥‥‥」