その後、俺は忍に提案され日課となっていた部活後の練習を近所の公園で行った。






「なんかつまんねえな、あの先生」


「え?」






日に日に強烈になってゆく忍のストレートを捕球し、俺は立ち上がってボールを軽く投げ返した。






「しかも野球は素人じゃん、あの先生」


「まあ中学の顧問だしね。

体罰が無いだけラッキーじゃん」


「でも先輩には蹴られたりしてんじゃん、お前」


「それは別に、どこにでもある事だろ」






再び腰を屈めミットを中心に構えると、忍は要求したストレートではなく鋭い変化球を投げてきた。






「アッブネ!」


「よく取れたな。やっぱお前スゲーよ」


「球拾いしながらちゃんと見てるからな、お前のカーブの軌道は」


「早く3年になりてえな」


「‥‥‥」






別に俺とじゃなきゃ、そこまで待たなくとも秋にはエースとして2年の先輩とバッテリーを組めるだろ。

卑屈だった俺は、そう考えていた。







「‥そうだな」


「これ捕球出来たら天才」


「オワッ!なにこれ!?パーム!?」


「うわ‥初見で捕球しやがった‥」


「‥オレ天才?」


「かもな。どんな動体視力してんだよ」






きっと忍は、本心からそう言ってくれていたのだろうけど、この頃の俺はそれをただの同情や優しさだと捉えていた。







「そういや昨日、工藤先輩たち単車に乗ってたらしいぞ」


「マジでレディースなの!?バスケ部なのに」


「変わり者というか、謎な人だよな」


「まあ‥可愛いからなんでもありだけど」