若さ故の経験不足。

一度要求を飲んでしまえば、こいつはカモれると相手をつけあがらせ、そこから先は分かりきった展開が待っている。







「山岡先輩、これ‥2千円‥」






翌日の昼休み、

忍に付き添ってもらい、先輩達がタムロする校舎の外、3年の教室前に出向くと、俺は言われた通り用意した金を手渡した。






「おう、サンキュー」






先輩は金を受け取ると、窓から自身の教室へ入り、どこで拾ってきたのか分からない様な汚いビデオテープが入った袋を手に戻って来て、それを俺に手渡した。






「‥‥どうもっす」






袋を受け取り、その場を離れようとすると。






「楢崎、俺のも買わない?」


「えっ」






他の野球部の先輩がまたも俺に言ってきた。






「いや‥もう自分、小遣いが‥」


「来月でいいからさ」


「‥‥‥」






小学校の時は無かった理不尽な上下関係。

しかし、ここで断れる勇気があるなら、そもそも2千円だって渡していない。






「‥わかりました。来月で良ければ‥」


「ラッキー、お前良い奴だな」


「アハハ‥どうもっす‥」


「おい、大樹‥」


「‥‥‥」